劇団ラッパ屋

弘中麻紀の『エッホ!巻』はじまります。

ウェルカム・トゥ・ホープ!!

2023.6.27

『ウェルカム・トゥ・ホープ』初日が開きました! 7月2日まで紀伊國屋ホール、その後北九州芸術劇場に参ります。よろしければぜひお運びくださいませね。

 今回の私の役は可愛い可愛い娘のいるお母さんです。その娘役の上大迫祐希ちゃんとツーショット。

弘中麻紀の『エッホ!巻』

 祐希ちゃんは、5月のリーディング公演『ショウは終わった』では、主役の直子を演じてくれました。容姿もほんとにキュートですが、声がまた可愛くてたまらんです!
 私からこんな可愛い娘が出てきたなんて、演劇は本当に素晴らしいですね。

 祐希ちゃんは22歳。
 私の同級生の子供たちも続々と成人し、結婚しています。お孫ちゃんができた友達もいるので、私の年齢からすると、まさにリアルな『子供の年齢』だと思います。

 が、私の実の娘はまだ12歳。私がいわゆる高齢出産だったことを、おわかりいただけるかと思います。

 リスクが高いことと、とにかく私と子供が心配ということで、妊婦健診には毎回、夫が付き添ってくれていました。
 当然先生は、彼が出産に立ち会うものと思っていたので、きっぱり
「立ち会いはしません!」と断言した時は、かなり驚いていたようです。
 というのも、夫は血が大の苦手。出血の話をしただけで目眩を起こすような輩なのです。自分でもよくわかっていて、
 「出産で大変な時に、自分が血を見て倒れたりしたら大迷惑なので、立ち会いは絶対にできない」と先生に説明していました。

 さて、出産当日の話。

 朝、トイレに行ったらわずかに出血が。予定日にはあと10日もあるけどなあ、と思いつつ、一応産院に電話をすると「入院の支度をしてすぐに来なさい」と。
 その頃には、いつ産まれても良いように荷造りはしてあったので、すぐタクシーで向かいました。

 結果、破水していたため、もう今日、明日中に産まなければならないと。とにかく、陣痛を起こさなければならないので、産院の階段を1階から6階まで昇ったり降りたりを繰り返し。お腹重いし、マジ辛い!
 それでも陣痛が起きない。陣痛起こすツボに鍼を打ってもらう。それでも起きない。最後に陣痛促進剤を打ってもらう。
 ん?痛くなってきた!きた!陣痛来ました!
 という頃には夫も病室に到着していて、私の陣痛のサポートに入ってくれていました。それからは…あまり記憶が無いのです。
 とにかく、痛い!痛いという言葉じゃ足りないくらい痛い! 波はあるのですが、どんどん痛みが強くなり、どんな体勢でも楽にならない!

 で、ここからは夫に後から聞いた話です。

 赤ちゃんの心拍をみている装置があるのですが、それが一瞬、止まったみたいに見えて「え?!」と思っていたら、助産師さんたちがバタバタと部屋を出入りし始め、大騒ぎになったそうです。
 私にも何やらうっすらと聞こえていて、
 「危険なので、緊急帝王切開します!手術の準備します!」
 という、かなり緊迫した会話が。手術用に圧迫靴下を履かされたり、いろいろ準備している様子はわかる。一応私に手術の確認を取っているのですが、「何でもいいから早くこの痛みから解放して!」という気持ちなので、私はただ頷くのみ。
 一方、まわりの緊迫感と私の痛がり方に完全におびえきっている夫。

 私が移動ベッドに乗せられ運ばれて行く時、夫はただただ怖くて、そのままついて行っていたそうで。

 すると、
 「普通分娩、いけます!」
 と急遽、そのまま出産に突入することに。夫はおろおろしたまま、その場から離れるタイミングを失ってしまったらしい。
 なにしろ私も出産中なので、
「あなた、血怖いんだから、今出て行った方がいいよ」
 なんて気付く余裕も、もちろん無いわけです。
 助産師さんたちも大変なので、
 「ご主人!奥さんに水!」とか
「ガムテ!そこのガムテ取ってください!」(ガムテ、何に使ったんだろう)とか、夫に次々と指示。
 あわれ夫は、おろおろと動き回り、完全に分娩室から出るタイミングを失ってしまったのでした。

 そして、私は無事に女児出産。夫ははからずも娘の誕生の瞬間に『立ち会ってしまった』のでした。

 後から
 「血、大丈夫だった?」
 と聞くと、
 「全然、大丈夫じゃなかった!」と。
 「すごい大量の血で、本当にひっくり返りそうだったけど、ここで倒れるわけにいかない、と思って。でも、誕生の瞬間にいられたのは、ほんとに良かった。感動だった」
 とのことでした。まあ、常に私の頭側にいたことが良かったようでしたが、今思い出しても、よく倒れなかったなあと思います。

 その後、血を見ても全然大丈夫!…にはならず、夫はさらに血がダメになってしまいました。今では、人間ドックで採血する時にもベッドで横にならせてもらわなければならず、出血の話を聞いただけで、朝礼での貧血女子のようにすぐフラッと倒れるようになりました。

 おそらく彼は、この文章を読んだだけでもひっくり返ると思うので、この話は彼の目につかないように気を付けます(笑)

 まさに『ウェルカム・トゥ・ホープ』、我が家に希望の塊がやってきた、大切な1日のお話でした。

 最後に、娘が小学5年生の時に書いた作品をご紹介。

弘中麻紀の『エッホ!巻』

 それでは皆様ごきげんよう!

弘中 麻紀

弘中 麻紀 プロフィール

ひろなか・まき
兵庫県出身、11月12日生まれ。早稲田大学演劇サークル・演劇集団てあとろ50'を経て、1992年にラッパ屋に入団。親しみやすい笑顔とコメディセンスで、舞台、映画、テレビドラマと幅広く活躍中のバイプレイヤー。近年の主な出演作品に【舞台】『百日紅、午後四時』(鈴木聡演出)、『夫婦漫才』(ラサール石井演出)、『王将』(長塚圭史演出)【映画】『決戦は日曜日』、【ドラマ】『弁護士ソドム』(TX)、『新・ミナミの帝王22』(KTV)、『卒業タイムリミット』(NHK)など。

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