劇団ラッパ屋

第3回公演
『ジャズと拳銃』

1985年8月19日(月)~25日(日) 7ステージ @東芸劇場
※東芸劇場との提携で、夜8時開演の「サラリーマン劇場」と銘打って上演。

第3回公演『ジャズと拳銃』
第3回公演『ジャズと拳銃』
第3回公演『ジャズと拳銃』

キャスト

ガマ
竹内義明
ラビ
和田都
タカシ
福本伸一
イサム
与儀省司
ラッパ
熊川隆一
泰子
早川晃子
キミコ
大森美紀子
ローズ
森泉
富山
長谷川晃示

スタッフ

作・演出
鈴木聡
美術
福島正平
照明
久保孝一
板谷静男
音響
加藤昌史
衣裳
大沢郁子
小道具
堀江泉
宣伝美術
森永正広
協力
劇団てあとろ50’のみなさん
制作
喇叭屋制作部
企画・製作
サラリーマン新劇喇叭屋

第3回公演『ジャズと拳銃』

チラシの裏口上

さぁ、アフター・ファイブはお芝居だよ。

さぁ、アフター・ファイブはお芝居だよ。 えーと、<サラリーマン劇場>という企画をやります。働いている人に観ていただきたい。だから、平日の8時開演、を中心にした公演。(課長、帰りに、ひと芝居観て行きませんか。)(おっ、いいねぇ。久しぶりにカンドーするか。)なんて感じで連れだって来てくれたら、とても嬉しい。役者たちも、6時まで会社やって、電車の中でドーラン塗りながら、劇場入りする予定です。 だいたい、会社やってるほとんどの人は、演劇なんかバカバカしいと思ってる。演劇やってるほとんどの人は、会社なんかバカバカしい思ってる。サラリーマンが心の底から楽しめる芝居がなかったの、当然です。演劇は、タイムカードとか、義理とか、世間とか、そういうもん、ずっと無視して来た。世捨人ぽかったりした。文化祭ぽかったりした。カルチャーぽかったりした。会社に入って、働き始めてみると、僕らには観る芝居が無かった。 僕たちは、会社も、演劇も、両方とも、バカバカしいと思っていません。残業や、マージャンや、団欒が、サラリーマンにとって、メチャ大切なものなんだってわかる。だから、そういうモノに負けないオモシロイ舞台をお観せしようと思います。ビシビシ来る奴。人情に笑い泣き、スリルに酔いしれ、ロマンに胸躍らせ、思わずインナートリップしてしまうような、ハード・エンターティンメント。奥さんに、(残業だよ)とかウソついて、オジさんたちがこっそり劇場に来るようになれば、いいな。接待の場としての演劇、が私の夢である。とか言って。 ま、とりあえず、(アフター・ファイブは劇場へ)という、最新のライフスタイルをお試しください。

パンフレットより

「ジャズと拳銃」のジャズ

ジャズという音楽は、なんとなく、尊敬されている。職場などで、ウダツのあがらぬ奴がいても、(僕、趣味、ジャズです)なんてことになれば、(おおっ)ってな感じで(アイツは奥がある)と世間が勝手に思い込みはじめる。そう、この(奥がある)という感じがジャズには大切だ。 そこんとこを、いちばんうまくやった人が、かのマイルス・ディビスであろう。ラッパを、たまにしか吹かないんである。ラッパを口にあてたまま、下を向いていて、時々、思いついたように(プウー)とやる。そうすると聴衆は、(おおっ)となる。なんか、俳句みたいなトランペットだ。ハッタリかマヤカシか、わかんないけど、確かに、僕たちは(プウー)に(奥)を聴く。マイルスが何を吹こうとしたのか、いろんなこと、イメージする。いろんな(奥)がひっぺがされちゃった現代、ジャズが人気っぽいのもそんなところに理由があるのかもしれない。 会社に勤め、いわゆるフツーのサラリーマンの毎日を見るにつけ、ああこの生活には(奥)が必要だ、と思うんである。企業とかって、とってもシステムだから、(この仕事で手柄をたてたら、課長になれる)とか(この時期に札幌支社勤務ということは、オレの人生、ここまでだ)とか、ぜんぶ、わかっちゃうんである。(奥)のない毎日、これは、けっこう、キツイ。彼には、システムを離れた場所になんらかの(プウー)が必要なんである。 ところで、演劇は、(プウー)の才能があると思う。限られた空間で、永遠を見せるさまざまなテクニックや方法論を磨いてきたからだ。そして、(プウー)の場所にならない限り、これだけ楽しいもんがいっぱい増えて、これだけオモシロイ人がいっぱいいる時代に、劇場に存在価値なんか、ナイんだぜ、ベイビー。 「ジャズと拳銃」は、演劇であるうえに、ジャズをいっぱい聴かせる。(奥)になろうとするストレートな努力が、カワイらしい、作品である。ここに、劇中使用した音楽のリスト(使用順)を掲げておいた。名曲、名演ばっかである。万一、この劇場で、(奥)を確認できなかったサラリーマン諸氏は、家のステレオスピーカーで、ご確認いただきたい。

1 キャラバン
オープニング。「Dinah Washington Reflection 18」(FOX-7071)の1曲。昭和30年代ぽいアツクルシー雰囲気が、たまんない。

2 センチメンタルジャーニー
唄は伊代ちゃんではない。ドリス・デイ。「More Hit Songs Plus 1001」(MFPL84811~20)から。この曲聴くと、焼け跡思いだしてイヤ、というオジさん・オバさんもいる名曲である。

3 メモリー・オブ・ユー
唄は、インクスポッツ。「All Hit Songs From 1001」(MFPL82801~10)。ラッパが泰子の歌を回想する場面で。

4 黒い瞳
「For Musicians Only」(I8MJ9021)というシブーいレコードから。トランペットはディジー・ガレスピー。タカシとラビが、手をつないで逃げるシーンで使われる。

5 テネシーワルツ
唄はパティ・ペイジ。「All Hit Songs From 1001」から。こんなにあったかいのに、こんなに哀しい曲、ない。映画「ライトスタッフ」でも使われていた。さて、どこのシーンでしょう。

6 ハーバーライト
前記のダイナ・ワシントンのレコードから。この曲をバックにしたモノローグで、富山役の長谷川は、役者としての新境地を切り拓いたと言われている。

7 ダンシング・イン・ザ・ダーク
映画「ザッツ・エンタティメント」のサントラ盤「Musical」(MM3022)から。えーと確か、「バンドワゴン」のナンバーでしたよね。タカシがガマの拳銃を奪うシーンで。

8 ショウほど素敵な商売はない
前記の「Musical」から。泰子のモノローグのシーンで、ラジオからちょこっと聴こえる。

9 スターダスト
ライオネル・ハンプトン・オールスターズの同名アルバム(V/M5505)から。このスラム・スチュワートの歌うベースに魅せられてジャズに入門した人もケッコー多いんじゃなかろうか。タカシとラビのイヤラシイ踊りのシーンで。

10 ブルースを歌おう
サラ・ヴォーンとカウント・ベイシーの共演アルバム「Send in the Clown」から。このサラ・ヴォーンを聴いていると、ほんと、黒い美空ひばり、と呼びたくなる。

11 オール・オブ・ミー
唄はビリー・ホリディ。「All Hit Songs From 1001」。ラッパと泰子のボタンがからまるシーンのBGM。

12 チェニジアの夜
「ミシェル・ルグラン・ミーツ・マイルス・デイビス」(849471)から。キラキラしたアレンジがスゴイんだ。タカシのモノローグ。

13 チュニジアの夜
これは、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズによるテイク。そのペットソロからエンディング部分だけ使った。迫力でしょ。タカシが拳銃を撃つクライマックス・シーンで。

14 上を向いて歩こう
昭和30年代といえば、この曲ですね。他のジャズの名曲たちと、こうやって比べ聴いても負けない、珠玉のスタンダードだと思う。

15 Say it
ジョン・コルトレーンの大人気盤「バラード」(VIM5623)のA面1曲目。ほんと、いいよね。うん、いい、いい。泣かせの天才ナンバー。タカシが撃たれちゃうところで。

16 思い出のサンフランシスコ
歌ってる人、あてたら、エライ。ムフフ、これが、我らが若大将・加山雄三なんだよーん。上手でしょ。シブイでしょ。「For the good times」(ETP90229)から。ラスト、ラビのモノローグで。

上演記録

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