キャスト
●キャバレーサボイの人々
- ガマ
- 竹内義明
- ラビ
- 和田都
- ラッパ
- 熊川隆一
- うたえ
- 深澤美恵
- てるえ
- 溝口直子
- よしえ
- 萱野忍
- トメコ
- 平田恵子
- ヨシカワ
- 武隈繁美
- みちよ
- 佐々木一美
●街の人々
- タカシ
- 福本伸一
- イサム
- 与儀省司
- ガジロー
- 久保孝一
- 陳
- 岡山一
- 静
- 大草理乙子
- ヤスコ
- 早川晃子
- キミコ
- 平野裕美
●悪者
- 富山
- 長谷川晃示
スタッフ
- 作・演出
- 鈴木聡
- 美術
- 川口夏江
- 照明
- 板谷静男
- 音響
- 祇園幸雄
- 舞台監督
- 村岡晋
- 宣伝美術
- 芹沢啓二
- 協力
- 演劇集団キャラメルボックス
劇団てあとろ50’
高津装飾美術
今吉順子
- 制作協力
- 加藤昌史
(ネビュラプロジェクト)
- 制作
- 喇叭屋制作部
近藤達朗
- 企画・製作
- サラリーマン新劇喇叭屋
あなたのユンケルに、なりたい。
サラリーマンといえば、ドリンク剤である。中年も、若手社員も、よく飲む。ゆうべ徹夜でさぁ、と一本。接待で二日酔いなのよ、と一本。ワラにもすがる気持である。だから金に糸目をはつけない。ユンケルなど、800円のがあるのに、思わず1200円のほうを買ってしまう。ドリンク漬けのうちは、まだいい。ウォール街では、一部の証券マンが麻薬漬けだと聞く。いやはや、ニューヨーク。ともかく世界中で、サラリーマンは体中にムチのアザをつくりながら、お勤めゴクローサンなのである。
さて、<サラリーマン新劇・喇叭屋>は、84年の旗揚げ以来、小劇場界のドリンク剤をめざして、ぐわんばっている。元気がモリモリわく、ハードなエンタティメントをお見せしたいと思っている。オカゲサマで、サラリーマン層の観客もふえてきた。小劇場の新しい市場を開拓したのではないか、と喇叭屋マーケティング部では分析している。というわけで「ジャズと拳銃」は、我々の旗揚げ作品である。つまり、ドリンク剤・演劇の原点。さらに、今回の(SIDE2)では「お笑い」「ショウアップ」などの、元気成分を増加した。初演時のモノを大幅にアレンジし、以前ご覧いただいた方にも新作としてお楽しみいただけることを約束する。アート・ブレイキーやバド・パウエルなど、熱いモダンジャズが彩る、スーダラ・メロドラマ。「あー、オモシロかった。明日もガンバロ」あなたのその一言が聞きたくて、「ジャズと拳銃(SIDE2)」は幕をあける。
ジャズはあなたを「その気」にさせる
①クワタくんの犯罪
チャーミングな音楽は、ひとを「その気」にさせてしまう。「その気」にも色々あって、「やたら走り出したくなる気」だったり、「花に水をやりたくなる気」だったりする。前者の典型は「ロッキーのテーマ」、後者の典型は「ビバルディの四季・春」である。だが若者にいちばん人着があるのは、なんといっても「男のコとイケナイコトをしてもいい気」にさせる音楽だ。桑田佳祐や松任谷由実はその代表であろう。「いとしのエリー」の濡れるようなセンチメンタリズムはいったい幾つの純情な唇を、湘南の浜で奪ったことか。「中央フリーウエイ」の目もくらむドライブ感は、いったい幾つの青い果実を、相模湖インターあたりのラブホテルへ連れ込んだことか。もしもクワタとユーミンが公序良俗紊乱罪で告訴されたら、証人となる娘たちの列は、東京地裁を7周半はするだろう。
②ホテイサマのKOパンチ
では我らがジャズは、ひとを、どんな「その気」にさせるか。楽しいスイングジャズは「カクテル片手に踊りだしたくなる気」、気持ちいいフュージョン系のジャズは「ハワイのビーチでダラーッと寝そべっていたい気」。だが、エネルギッシュなファンキージャズは、もっと凶暴だ。それはたとえば「タイソンのように誰かをKOしたくなる気」、「小錦のようにズンズンはたきこんでしまいたい気」である。ある種のジャズは、ひとをアブナイ「その気」にさせる。「叫びたい」「殴りたい」「ビールびんでひとの頭を割ってしまいたい」―――ホテイサマとあだ名されるような温厚を絵に描いた課長の心にも、アツイ欲望は眠っている。それに火をつけるのが、ジャズだ。かくして「その気」になった課長は、深夜、寝室の鏡の前でファイティングポーズをとってみる。泣き叫ぶトランペットを頭の中で鳴らし、妻の寝息をうかがいながら、シュッシュッ、とパンチをくりだす。そこに理由なんか、いらない。ジャズが鳴ってりゃ、ひとぐらい殴れるさ。
③出前持ちIN 1961
さて1961年、アート・ブレイキーが来日し、ニッポンはファンキージャズ・ブームに沸いた。その大ヒット曲「モーニン」は、ソバ屋の出前持ちさえ口ずさんだ、と言われている。’60年代アタマといえば、デモと投石とシュプレヒコールで有名な、安保闘争の余韻冷めやらぬ頃。そんな時代の空気も、ジャズ・ブームに味方したかもしれない。誰もが、誰かを、殴りたかった時代。喧嘩が途中で終わっちゃってまだまだ暴れたりないよ、そんな気持を、きっと誰もが持っていた。つまり、聴き手たちのほうもファンキーだったわけよね。と、やたら長―いイントロをふったところで、このお芝居、「ジャズと拳銃(SIDE2)」。1961年夏、ラーメン屋の出前持ちが「モーニン」を口ずさむところから物語は始まる。そして彼は、キャバレーのボスから女と拳銃を奪い、説明できる理由もなく、ファンキーなジャズにのって、拳銃を乱射する。もしもその姿に、少しでもリアリティを感じていただけたら、それはジャズのせいでもある。熱い60年代に逆戻りさせるような、エネルギッシュな力のせいである。かもね。