キャスト
- 村田一郎
- 熊川隆一
- 村田ハナコ
- 大草理乙子
- 村田クリコ
- 溝口直子
- 村田ツトム
- 木村靖司
- 青木
- 竹内義明
- 中島
- 岡山一
- 尾崎
- 与儀省司
- 島田
- 福本伸一
- 研究員早川ほか
- 早川晃子
- 研究員義若ほか
- 義若泰祐
- 研究員宇納ほか
- 宇納佑
- ジャズスケ恵子ほか
- 平田恵子
- ジャズスケ美恵ほか
- 深澤美恵
- 森田カズミほか
- 佐々木一美
- 荒木ヒロミほか
- 平野裕美
- 遠藤真由美
- 和田都
スタッフ
- 作・演出
- 鈴木聡
- 美術
- 枡岡秀樹
(ウエストコート)
- 照明
- 板谷静男
- 音響
- 藤居俊夫
(ステージオフィス)
- 音響操作
- 早川毅
(ステージオフィス)
- 舞台監督
- 村岡晋
- 宣伝美術
- 森永正広
与儀法子
- 協力
- ヴァイス
- 制作協力
- 加藤昌史・佐々木直美
(ネビュラプロジェクト)
山家かおり
- 制作
- 喇叭屋制作部
- 企画・製作
- サラリーマン新劇喇叭屋
うちでファミコンをピコピコやってたら、新しいゲームを思いついた。ゲームの名前は「JINSEI GAME」。プレイする人が自分自身の性格データや、活動フィールド(職場・学校をはじめ夜の六本木・大井競馬場etc)、および主要登場人物(上司・恋人・親友・悪の道の友etc)などのデータをインプットし、自分の人生をシュミレーションしてしまうのだ。たとえばゲームのワンシーン、取引先の手違いなのに、あなたは部長にガーガー怒鳴られてジーッと耐えている。ハイ、そこで選択肢です。
1とりあえずスイマセンと謝る
2いきなり泣いて真実を訴える
3心のままに部長をブン殴る
何事もブナンを愛する僕らは通常、2や3を思い描きながらも、やっぱ1を選んでしまう。だが、2や3のボタンを押したらどーなるだろう。突然、アフリカ営業所にトバされて(さらに)ライオンに食われるかもしれない。いきなりクビになってヤクザの世界に足をつっこみ(さらに)才能が開花して大親分になるかもしれない。コワイけど覗いてみたい、もう一人のワタシ。「JINSEI GAME」ならバッチリ見れる。コレ、売れるとおもうんだけどなあ。
まあ、昔は「人生、運命だ」なんて思ってたけど、これだけ自由になって、選択肢が増えて、何やってもそこそこ暮らせて、「一生プータローも可」という社会になると「運命」なんてアツ苦しい言葉はリアリティを持たないのだ。それよか「人生、選択ボタンだ」とわりきって、新しい、スリルのボタンをバシバシ押し続けるほうが、世界がぐんぐん広がって面白そうじゃないか。なんて思ってたら、ますます2や3の人生を試したくなってきた。ファミコン雑誌で「JINSEI GAME」を探したが見つからない。ほんじゃあ僕が芝居にするか、と思ったのです。
オタクの心
喇叭屋の竹内はオッタキーな奴である。先日もうちにきて、いつのまにかファミコンをやりはじめ、真剣な表情で裏ワザを駆使しながらマリオを88人に増やし、嵐のように帰って行った。その竹内が増やしてくれたマリオをファミコンに未熟な僕は一晩のうちに全員殺し、深い悲しみのなかで思ったのだった。「オタクは偉大だ。オタクの心は深い」
オタクは探究心のカタマリである。目に見える情報はもちろん暗号のように隠された情報まで、対象の「全貌をジュウバコの隅まで明らかにしたい」という深く真摯な探求心だ。だからアニメにしてもゲームにしても、「ジュウバコの隅まで明らかにしたい」欲望を奮い立たせるのだけの複雑なルールと情報性を持っていなければ、オタクの興味対象にはなりえない。名作と呼ばれるゲームはすべて、その条件を十二分に満たしている。そしてゲームの全貌を見届け、最終画面がディスプレイに現れた時、プレイヤーは落涙するほどのカタルシスとともに、悟りの境地にも似た静かな気持ちを味わうという。
さて、「ジュウバコの隅まで明らかにしたい」欲望を奮い立たせる、複雑なルールと情報性を持つゲームの最高峰と言えば、JINSEIである。これにばかりはマリオもドラクエもかなわない。こんな物凄いゲームをプレイするチャンスがたった一度きりだなんて、あまりにも切なすぎる。
竹内がまた嵐のように現れて、僕を88人にしてくれないだろうか。