キャスト
- キッド
- 和田都
- ピンスケ
- 与儀省司
- ももんが
- 熊川隆一
- 渥美
- 竹内義明
- 北川
- 長谷川晃示
- ハーシー
- 福本伸一
- ハマコ
- 早川晃子
- 三平
- 久保孝一
- ふね
- 室田紀子
スタッフ
- 作・演出
- 鈴木聡
- 美術
- 福島正平
- 照明
- 板谷静男
- 音響
- 加藤昌史
- 衣裳協力
- 今吉順子
萱野忍
- 宣伝美術
- 内谷敬史
加藤法子
- 協力
- 演劇集団キャラメルボックス
劇団てあとろ50’
劇団風力潜水艦
東京アクターズスタジオ
- 制作
- 喇叭屋制作部
- 企画・製作
- サラリーマン新劇喇叭屋
スターダストへ、ようこそ。
僕らは、ザ・ピーナッツにヒジ鉄をくらい、霧の中に消えて行ったハナ肇が忘れられない。もちろん、「シャボン玉ホリデー」のエンディングだ。そして、その時、ザ・ピーナッツが歌っていたのが「スターダスト」だった。植木や谷や布施明や小松政夫の、一週間でいちばん楽しくオシャレな時間が終わっちゃう。日曜日が終わっちゃう。いやだ、いやだ、とダダをこねる幼い心を、「スターダスト」は優しく、せつなく悟すのだった。-----ねえ坊や、楽しい時間は、いつかは必ず終わるものなのだよ。君の人生だってそうさ。いつか霧の中に消えて行く。だからこそ、ひとや世界は、こんなにピカピカ光っているんだ。----思えば僕たちは、小学校にあがる前に、世界は終わるから美しいことを、「スターダスト」によって知ったのだ。そして、その終わり方は、ちょっとエッチなことを言ってヒジ鉄をくらい、しょーがねーから帰ろ、と背中を向けるハナのように、軽く、さりげなくあるべきことを。御存じのようにサラリーマンの生活は、果てしなく、区切りのないモノである。1学期もなく、2学期もなく、ヘタすると40年も続く。その肩コリしっぱなしの精神は、盆と正月によって、かろうじて支えられている。いつのまにか、終わることを忘れている。だから美しいことを忘れている。劇場は、そういう人たちのためにこそ、ありたいとと思う。バカバカしく楽しい時間と、せつなく美しいラストシーンを、血と汗と残業にまみれた魂にお届けしたい。サラリーマン新劇・喇叭屋は、そんなあなたのハナ肇です。
スターダスト・サラリーマンのすすめ
「スターダスト」は、1929年にアメリカの作曲家、ホーギー・カーマイケルが、母校である小学校の校庭で、星空を見上げながら作った曲と言われている。なるほど、その夢幻的なメロディは、まさに宇宙だ。僕らは、そこに、カーマイケルの、星や空に1cmでも近づこうとする意志を感じる。ダ・ビンチは飛行機の設計図を描き、ヴェルヌは「月世界旅行」を書き、アメリカはアポロを飛ばし、そしてカーマイケルは「スターダスト」を作った。でも、そうしたさまざまな宇宙へのアプローチと、決定的にちがうところが「スターダスト」にはある。それは、「郷愁」だ。「月世界旅行」は、明日を夢見ているが、「スターダスト」のメロディは昨日を振り返るようだ。それは、カーマイケルのもう1つの名作「我が心のジョージア」がもつ気分と似ている。幼き日に走り回った花畑や、牛の声や川のせせらぎを想うように、カーマイケルは星空を見上げた。話はやたらでっかくなるが、ビッグバンが起こったころ、宇宙には光しかなかったそうだ。その光の粒が、どういうわけか惑星や、石や、コケや、ゲンゴロウや、人間になった。つまり、僕らは誰も、カラダの奥の、奥の、ずっと奥に、光だったころの思い出をもっている。それは、宇宙にぽっかりと浮かんでいるじぶんだ。「スターダスト」だ。
声を荒げるまでもなく、サラリーマンの生活は、残業・上司への気配り・妻との口論・腰痛などで満ち満ちている。そうした人々に、大人になる前のツツジの蜜の甘さや、人間になる前の、どこかですれ違った流れ星のことを思いだしていただくことが、僕ら演劇屋にできるせめてものサービスだろう。このお芝居を御覧の上、明日から、宇宙にぽっかり浮かんだ気持で、伝票整理に励んでいただきたい。接待マージャンで役満をフりこんでいただきたい。
というわけで、開演まで、しばらくご歓談ください。